除草剤は人類史上、最も悲しい発明

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農薬というと、「私たち人間にとってどのような毒性があるのか」という視点でしか議論されません。しかし、私たちの身体に及ぼす影響よりも、もっと深刻な問題が潜んでいます。そのことが、いまだに社会に認知されていないのは不思議です。

おそらく、未来のどこかの時代で気づく人が現れるのかもしれません。しかし、今のままでは、気づく前に人類が滅亡するかもしれない。手遅れにならないうちに、その問題に気づく人が増えていかねばなりません。

それは、除草剤の発明と利用という問題です。

除草剤は、いわゆる「雑草」を駆除することが目的です。その目的こそが、地球のあらゆる生命にとって致命的なダメージを与えるのです。

トコトン突き詰めて調べてみないと、この除草剤の恐ろしさに気づくことはなかったかもしれません。あるいは、除草剤が使われた畑の惨状を実体験しなければ、このような警告を発することもなかったでしょう。

順に説明していきましょう。

雑草と呼ばれる植物は、私たちが何もしなくても生えてきます。つまり、過酷な環境でも生きていける能力を持った、すごい植物であるということです。

これをもう少しシンプルに描いてみましょう。何も生えていない、生き物の痕跡がないような荒れ地を想像してみてください。そこに雑草が生えてきます。

すると、地面の下では、雑草と共生する微生物が増えてきます。次にその微生物を食べるトビムシやセンチュウ、ダニといった小動物が増えてきます。さらに、それらの小動物を食べる昆虫が増えてきます。昆虫を食べる爬虫類や鳥類が増えます。さらに地上部でも、植物を食べる虫や鳥、様々な草食動物が増えてきます。

つまり、雑草が生えてくることによって、雑草と共生する原始的な微生物が増え、そこから高度な生き物の食物連鎖が始まるというわけです。もちろん、雑草が繁殖すると、やがて人間が食べる野菜や果物のような高度な植物も繁殖してきます。

雑草が生えるということは、未来の私たちの食べ物だけでなく、地上のあらゆる生命の起源になっているのです。ところが──

なんと今の時代の農業技術は、人間が食べる野菜だけを(まるで植物工場で育てるように)「肥料」で育てることしか考えが及ばず、多様な生命の起源である雑草を薬品で殺してしまいます。

雑草が枯れてしまうと、そこから生まれるをはずの「将来の多様な生命」を殺します。将来の多様な生命のなかには、もちろん人間もいるのです。

とはいえ、この話にはすぐ反論が出てきそうですね。「野菜は肥料があれば育つのだから、人間は滅ぶことはない」と。それは浅はかな考えです。肥料の多くは天然資源であって、石油より早く枯渇すると考えられています。肥料が枯渇すれば、現代農業は終わりです。

そして、本当に恐ろしいのは、除草剤を使っていた畑の深刻なダメージです。長い期間、除草剤が使われた畑は、雑草が生えなくなっています。すると微生物も増えず、虫も増えず、爬虫類も鳥も近づいてきません。まさに死んだ土地になるのです。

いま、私は本社農場で土壌改良を進めていますが、除草剤が多用された畑は、2年経ってもダメージが修復しません。雑草がわずかに生えても、すぐに黄色く変色して枯れてしまいます。このような場所では、どんなに野菜の種を播いても、まったく育ちません。

肥料を使わずに作物を育てるためには、まず自然に生えてくる雑草を可能な限り繁殖させ、生態系を豊かにしていくことが必要です。その結果として、美味しい野菜や果物などの高度な植物が育ってくれるからです。

もし、世界経済が破綻して肥料が輸入できなくなったら? もし大震災に見舞われて、肥料を輸送する手段が奪われたら? 国際社会で日本が孤立して、肥料や燃料などの輸入がストップしたら?

いまでも肥料となるリン鉱石やカリウム鉱石などの枯渇が指摘されていて、日本に入る肥料の価格が高騰していると聞きます。そんな状況のなかで、日本人は、安心して生き続けていけるのでしょうか?

そう遠くない将来、多くの人口を支えるために、肥料を使わない農業技術に転換せざるを得ないでしょう。そのとき、除草剤の影響で田畑のダメージが大きすぎて、自然栽培に切り替えることができなければ、多くの人間が飢え死にするしかありません。

いまの時点では「心配しすぎだ」と笑われるだけかもしれません。しかし、Xデーは必ず来ます。農業にかかわる研究者、専門家は、将来の手立てを考えておく義務や責任があると思うのですが、このメッセージを受け止めてくれる人は、今の時代にどれほどいるでしょうか。

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